はじめに
2018年4月22日から24日の二泊三日で新茶シーズン到来の静岡茶園を訪問させて頂きました!
特に参考にしたのは『紅茶をめぐる静岡さんぽ』という奥田実紀さんの著書で、静岡の茶園からカフェまで幅広く網羅されていてとても頼りになりました。
ただし、2015年に出版された本ですので、どうしても情報は少し古くなってしまいます。
4月22日(日)のランチタイムに本書に記載されているカフェギャラリー日和に訪問したところ、原因不明の休業で、とても楽しみにしていただけに残念な思いをしてしまいました。。。事前に電話するなどして確認した方が良いですね。
第一目的地は益井園
今回の第一目的は、日本紅茶協会ティーインストラクター研修にも和紅茶の講師としてわざわざ汐留の紅茶会館までお越し頂いた益井悦郎さんにお会いして、実際に茶園を拝見することでした。
川根の茶園を眺めながら63号線をどんどん北上すると道の駅 川根温泉がみえてきました。
道の駅の中では、早速、川根和紅茶を使った紅茶ロマンというペットボトル飲料(販売:有限会社諸田製茶)が自動販売機で販売されていて、産地に来た実感がいっきに湧きでてきます。
さらに、産直販売ではたむらのうえんが和紅茶を販売していました。たむらのうえんは前日から初摘みを始めたそうです。パッケージは息子さんのデザインだそうで、センスがいいです。
川根温泉からさらに北上して益井園に到着しました。(なぜかカーナビがGPSを見失いなかなかたどり着けませんでした。)
和紅茶のパイオニアとしてティーインストラクター研修でもたくさんお話を伺いましたが、実際に茶園を拝見して、座学の知識がいっきにリアルなものになりました。茶園をご案内頂きました。
新種を植えたばかりということで、こちらも10年スパンの気の長い作業が始まっています。より美味しい紅茶を作るため無農薬で試行錯誤される様子はやはりパイオニアです。
ティーインストラクター研修でも金谷の研究所で茶摘みの実習がありますが、農家さんの試行錯誤のお話を伺いながら茶園の様子を拝見するのはまた格別です。
ローアングルで。道中、たくさん茶摘みをしている様子を拝見しましたが、益井園ではもう少し待ってからということ、摘まれる直前のエメラルドグリーンの美しい若葉が生えそろっていました。
摘ませて頂いた一芯二葉。無農薬ですのでこのまま生で食べさせて頂きました。とてもやわらかくで、苦味少なく、口の中にうっすらとした茶の味が広がります。
その後、お部屋にご案内頂いてこれまでの工夫、今後の課題をたくさん伺いました。なんと2009年製の貴重なヴィンテージものの茶葉もアルミを開封して飲み比べをさせて頂きました。普段、賞味期限を過ぎたお茶を飲む機会はありませんが、飲み比べてみるとヴィンテージにもその良さが備わっているのがよくわかりました。
益井さんのシングルオリジンへのこだわり、つまり、茶園として自社のブランディングを確立させると同時に、そういった自園のオリジナル茶葉で切磋琢磨することの重要性をお聞かせ頂きました。また、茶摘みや製造のための機械も倉庫で拝見しました。
川根紅茶の見学後は寸又峡がお勧め!
益井園からさらに山を登ると寸又峡に到着し、その山中には夢の吊り橋があります。深緑のダムの水色とのコントラストが美しいです。
遠くからみた夢の吊り橋。結構揺れます。最大10人までしか一度に渡れません。
寸又峡には晴耕雨読というおしゃれなカフェがあります。
晴耕雨読も『紅茶をめぐる静岡さんぽ』の本の中でご紹介されています。店長は東京中野出身の方で、週の半分を中野のお店で、残り半分を寸又峡で過ごしておられるそうです。
ハンモックカフェも隣接されています。日暮れには閉店してしまいますので、ご注意ください。
夢の吊り橋に続く歩道に入る直前に晴耕雨読の別館もあります。こちらはハンモックではなく、足湯をしながらカフェを楽しめます。
晴耕雨読カフェにはもちろん、川根紅茶のパイオニア益井園のお茶が取り扱われています。
夢家(Y’s Farm)が企画しているチャ・ゲバラというチェゲバラのパッケージをした紅茶も目を引きます。丸子紅茶の村松二六さんのご指導のもと製造されたと記載されています。
相藤園の川根紅茶はリーフでもティーバッグでも販売されています。ティーバッグは1包あたり3gと少し多い目です。
寸又峡の旅館翠紅苑のショップコーナーでは、高田農園の川根べにふうき紅茶をリーフとティーバッグで扱っていました。
同じく高田農園の手摘み和紅茶です。高級感があるパッケージに仕上がっています。
2日目はお茶×ITで大注目の流通サービス社
2日目には菊川市の株式会社流通サービスに訪問しました。社名からは製造、販売網を持たれている会社のイメージをうけますが、実はジェトロでも『茶製造の流通サービス、無農薬栽培の抹茶を海外で展開-将来的にはIoTを活用した生産も視野に-』と紹介されるかなりの先進企業です。
スリランカの茶園とも直接のパイプをもち輸入する一方、日本のオーガニック緑茶、抹茶を世界中に展開しています。茶類だけでなく、コーヒーも輸出入の流通網をもたれています。実は日本の有名紅茶メーカーも当社経由で紅茶を仕入れ始めたところが多いようです。
ジェトロにも紹介されていた、ソーラーパネルと組み合わせた茶園。茶の苗木を植えてから茶を収穫できるようになるまで数年かかりますが、その間を同じ土地で太陽光発電による売電収入を得ているモデルです。無農薬かつ電力までエコで素晴らしい取り組みです。センサーを活用したIoTの実験も始めているそうです。
燻製紅茶で有名なカネロク松本園
2017年のシングルオリジンティーフェスティバルで燻製紅茶とウィスキーボトルのような紅茶ボトルのディスプレーでひと際異彩を放っていたカネロク松本園にも訪問させて頂きました。
既に初摘みは開始されていて製造中に発生する緑茶のいい香りが一面に広がっていました。
紅茶用に準備されている別工場も拝見しました。私のまわりでも燻製紅茶は高評価でしたが、松本さんによれば試行錯誤の結果生まれたもので、それまでにたくさんのお茶を試作品で無駄にしてしまったということ。今後も、珍しい食材を使って燻製の実験をしていくそうで、高付加価値紅茶の筆頭としてますます注目されると思います。
ふじのくに茶の都ミュージアムで3時間!
つづいて、昨年のティーインストラクター研修の金谷実習では改修中で見学できなかった ふじのくに茶の都ミュージアム を訪問。
こちらがまた、秀逸の出来栄えで、お茶、紅茶に興味がある方には長時間いても飽きない場所です。
展示場は1階と2階に分かれていまして、2階から見学するルートですが、エスカレーターを上がるとガラス窓から平野が視界に飛び込んできます。
併設されている小堀遠州の日本庭園を上から見下ろすことができます。これもまた美しくて眺めていて飽きません!
2階は「世界のお茶」コーナー。全編撮影OKです。
まず最初に茶の木です。茶園のイメージでは茶の木は1メートルにもならない小さなものですが、実は中国種とアッサム種に大きくわかれ、アッサム種は樹高18メートルにまで達するのです。入口にはそんな大きな茶の木の模型が1階から吹き抜けで展示されています。
茶の葉もアッサム種と中国種では異なりますが、なかなか現物を見比べる機会がありませんでしたが、こちらで展示されています。
世界の喫茶習慣とTeaとChaの呼び方マップです。
この世界のお茶の種類コーナーだけでかなりの時間を過ごしてしまいました。
下にある茶の棚は引き出して触ったり匂いを嗅いだりすることもできます。
それぞれのお茶の水色も再現されています。
中国茶のコーナーにも奥深い中国茶の複数の種類がむき出しになってテーブルに置かれています。オレンジペコの元になったという白毫も手に取って香りをかぐことができます。
お茶の生産や流通などについても詳しくパネルで表示されています。生産や消費でトップにくる国の中には意外な国名も混ざっていたりして、これもじっくり拝見しました。
1階に下りる前に、また別角度から小堀遠州の庭園を拝見。
一階は他館から借りた資料などもあり一部しか写真撮影は許可されていないのが残念ですが、日本の茶の生産や製造方法などを体系立てて学ぶのに最適な場所です。
緑茶農園を始めて訪問した時に視界に飛び込んでくる違和感がこちらのファン。霜がおりるのを防ぐファンですが、こちらについても実物大で解説があります。
終盤では顕微鏡でカテキンを覗いてみたりと科学的アプローチもあります。
さらに、世界のお茶製品ということで、紅茶も並んでいますが、まだ当サイトでもカバーしきれていない会社がいくつかあり、参考になりました。
別館にあるお土産コーナーには緑茶、茶器、茶を使ったアイスなどバラエティー豊かですが、もちろん和紅茶も取扱いがありました。喜作園の和紅茶です。
静岡有機茶農家の会の国産紅茶です。
こんな珍しい あるけっ茶 という茶のペットボトルも見つけました。
庭園の中も見どころが多く、音声ガイドを借りてぶらぶら散歩しているとあっという間にミュージアムで3時間を過ごしていました。とにかくお茶が好きな人、取り扱っている人は間違いなく楽しめる充実したミュージアムでした。
静岡の人気チェーン店 This is Cafe
続いてまた『紅茶をめぐる静岡さんぽ』に登場したThis Is Cafeの藤枝店へ。静岡で複数店舗に展開されているチェーンで、店内装飾もハイクオリティです。
外からの光の入り方が美しいです。
和紅茶のラテと同じく紅茶のパイのセット。紅茶のラテにはラテアートも。甘くなく、しっかりと紅茶の味を活かしたラテでした。
2日目最後の和紅茶との接点は焼津グランドホテルのお土産コーナーでした。焼津のお勧め土産として丸子紅茶(まりこと呼びます)が販売されていました。
3日目は久能山東照宮を参拝
3日目は焼津から東に進んで久能山東照宮を参拝。徳川家康が祭られていることで有名ですが、静岡茶の始祖とされる聖一国師にもゆかりが深い神社です。併設の久能山東照宮博物館には歴代の徳川将軍の武具を直接みることができて、こちらも満足度が高いです。
静岡市内に入り和紅茶を扱うレストランP’s Restaurantへ
静岡市内に戻ってP’s Restaurantへ。ランチセットは珍しい野菜をふんだんに使ったプレートになっています。コックさんでもある店長が料理の解説をして頂けます。
追加で800円ほど支払うとデザートがアフターヌーンセットにアップグレードされます。和紅茶を使ったシフォンケーキも楽しめます。
当店でポットで提供されているのが丸子紅茶でした。野菜の繊細な味を邪魔せず、スイーツにも合う丸子紅茶のことを店長に尋ねると、いつも購入されている生産者の村松さんにご親切にお電話して頂いて、車で15分の距離ということもあり急きょ訪問させて頂けることになりました。
急きょ訪問させて頂いた丸子紅茶
丸子紅茶も『紅茶をめぐる静岡さんぽ』に紹介されています。明治時代に紅茶製造を指導、広めた多田元吉さんの植えた原木を守り、1989年より紅茶の生産を始めます。1997年にはべにふうきの苗を植え、ミルクに負けない紅茶作りを志されています。
インドの紅茶生産地とのお付き合いも深く、現地では逆に緑茶生産に関心が高まっていることから、緑茶製造の中古機を輸送しようとして苦労されたお話を聞かせて頂きました。また前日には、新宿御苑で大学の教授や研究者と一緒に茶の木めぐりをされていたそうです。明確に管理されているわけではないですが、新宿御苑の中にはあちらこちらに茶の木が植えられているそうで、秋の花が咲く頃に再訪して日本の在来種なのか外来種なのかを観るツアーもご予定されているということでした。
『紅茶をめぐる静岡さんぽ』を片手に、たくさんの茶園やカフェを訪問させて頂いてとても充実したツアーになりました。世の中にはでない(出せない?)生産者さんの思いを肌で感じることもできました。茶をより安く手軽に消費者に届けなければいけない一方で、農家ごとの特色を際立たせてブランド化し良いものは良いものとして評価され高く売れる流通も必要だと実感しました。
訪問できたのは本書に掲載されている茶園、カフェのほんの一部です。これからも茶園さんを訪問させて頂いてTeaTaster.jpでご紹介できればと思います。
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